ひと言で「交通事故」と言っても、加害者から支払われる賠償金の金額はさまざまです。慰謝料も高額になるケースと低額になるケースがあります。
どういった事情があると慰謝料が増額されるのか、あるいは減額されてしまうのか、正しい知識を持っておきましょう。
以下ではパターンごとに交通事故の慰謝料が高額になる場合と低額になる場合について、弁護士が解説していきます。
このページの目次
1.慰謝料が高額になる事故の種類
いくらの慰謝料が認められるかは、事故の種類によって大きく異なります。
以下で事故のパターンごとの慰謝料の多寡を大まかに記します。
- 物損事故…基本的に慰謝料は発生しない
- 軽傷で後遺障害が残らなかった…慰謝料は低額(数万~数十万円程度です)
- 軽傷ではなかったが後遺障害は残らなかった…慰謝料は高くならない(数十万~200万円程度です)
- 後遺障害が残った…重大な後遺障害であるほど慰謝料が高額になる(100万円~3,000万円程度です)
- 死亡した…慰謝料は高額になる(2,000~3,000万円程度です)
2.慰謝料の増額事由
同じような形態の事故でも、個別の事情によって慰謝料が増額される可能性があります。
慰謝料の増額事由としては以下のようなものが典型です。
- 被害者が退職、失職した
- 被害者が離婚した
- 被害者が中絶、流産した
- 結婚が破談になった
- 退学、留年した
- 入学、留学を諦めた
- 加害者や事故態様が悪質
- 後遺障害が残ったのに逸失利益が認められなかった、あるいは低額になった
外貌醜状や味覚・嗅覚障害、歯牙障害などの後遺障害が残ったケースでは、労働能力や収入の低下がないという理由で逸失利益を減額される可能性が高くなります。その場合、調整的に慰謝料が増額されるケースが少なくありません。
3.慰謝料が減額されるケース
反対に、以下のような場合には慰謝料が減額される可能性があります。
- 被害者の過失割合が高い
被害者の過失割合が高くなると、その割合に応じて賠償金が全体的に減額されるので(過失相殺)、慰謝料も低額になります。
- 被害者側の事情で損害が拡大している
たとえば以下のような場合、被害者側にも責任を一部負担させるべきと考えられるので、被害者の慰謝料が減額されます。
- 被害者がもともと椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症であったためにむちうちなどの治療に日数がかかった場合
- 被害者が精神的に落ち込み治療に消極的だったために治療期間が長びいた場合
- 被害者の家族が目を離したために子どもが飛び出して事故に遭った場合
- 同乗していた被害者が運転者による危険な運転を容認していたり煽っていたりした場合
慰謝料を含めた交通事故の賠償金を正確に計算するには法的知識が必須です。不当に低い慰謝料で示談してしまうことのないよう、事前に弁護士に相談して正しい知識を身に付けておきましょう。